聖書各巻緒論(14)
説 教 題:「ヨシャファテの求め」      井上義実師
聖書箇所:歴代誌第二20:14~24

 聖書各巻の緒論は歴代誌第二で第14回となります。歴代誌は、ほぼ同時代の列王記が記さなかった面を私たちに表しています。ユダヤ人が伝えるヘブル語聖書(マソラ本文)は、内容は同じですが、配列・順番が異なります。トーラー(律法の書)ネビーム(預言書)、ケトビーム(諸書)と区分されています。ユダヤ人は聖書をこの3つの言葉の頭文字をとってタナハと呼んでいます。3番目の区分のケトビーム(諸書)の最後が本書です。ユダヤ人の聖書では歴代誌第二が最後の書巻になります。

 イエス様が、ルカ11:50・51でユダヤ人が流した預言者の血はアベルからザカリヤに至ると言われましたが、ザカリヤは本書24:20~22に出てきます。創世記4章でアベルは神様に喜ばれる供え物という義しい行いをして、兄カインに妬まれて殺されます。最初の殉教者です。ユダヤ人の旧約聖書の最後が歴代誌第二ですので、神様の言葉を語って殺されたザカリヤが最後の殉教者になります。イエス様のこの言葉は、私たちが創世記からマラキ書までの殉教者と言うのと同じ意味になります。

Ⅰ.基本的なことがら(著者、年代は前回に同じ)

著者:伝承としてはエズラの名が上がります。歴代誌とエズラ記のつながりは古来認められてきました。歴代誌の結語は、エズラ記の序言とほぼ一致しています。
執筆年代:エズラであれば前5世紀後半となります。(エズラのイスラエル帰還が前458年)。
大区分: 1-9章  ソロモンの治世
    10-29章 王国の分裂、南王国ユダのレハブアムからゼデキヤの治世

Ⅱ.基本的なメッセージ:「神様の約束の真実さ」


 神様はダビデに神殿建設を止められましたが、その子ソロモンが成し遂げたのは神様の約束の成就です。ソロモンによる神殿建設は本書5章で完成します。契約の箱が安置され、賛美が献げられると神殿に雲が満ち、主の栄光が表わされました。神様はダビデにダビデの子孫が王位を引き継ぐことを約束されました。

 歴代誌には列王記に出てこない3つの大きな戦いの勝利があります。1番目は13章のアビヤの時代、北王国イスラエルの初代ヤロブアムに勝利しました「彼らがその父祖の神、主に拠り頼んだからである」(13:18)。2番目は14章のアサの時代、エチオピアの100万の大軍が押し寄せました。「主よ、力の強い者を助けるのも、力のない者を助けるのも、あなたには変わりはありません。」(14:11)と、アサは主に呼び求めました。3番目は今日の聖書箇所になります。

Ⅲ.聖書箇所のメッセージ:「ヨシャファテの求め」20:14~24

 アサの息子、ヨシャファテの時代に近隣のモアブ、アンモン、エドム連合軍が攻め寄せてきました。ヨシャファテの施策は、戦争の準備でも、和平工作でもなく、ユダ全国での断食の祈りでした。この時、神様の霊が、レビ人ヤハジエルに注がれました。神様がユダに代わって戦われる神様はユダを救われる神様はユダの民と共におられるとの使信を伝えました。

 ヨシャファテは戦いにあたって、歌うたう者、聖なる装いをして賛美する聖歌隊を任命しました(21節)。「主に感謝せよ。その恵みはとこしえまで。」(歴代第一16:34)と契約の箱がエルサレムに担ぎ込まれた際に、ダビデが歌っています。この賛美は、神殿以前からの祭儀的な賛美であると言えます。ヨシャファテが近隣諸国の連合軍に向かうこの時、賛美する者は兵士の前を進み、大軍に向かっていったのです。まるで戦争に勝って、勝利の賛美が献げられているかのような光景です。

 「伏兵」(22節)とは人間だったのでしょうか、主の使いだったのでしょうか、超自然的なものだったのか、詳しくは分りません。しかし、ヨシュア記のエリコ陥落の時のように剣による戦いではありません。神様に仕える聖なる者たちを用いられて、神様は勝利を与えられました。戦う前に神様への賛美がささげられ、神様への賛美に応えられて、神様ご自身が戦われて、勝利が表されたのです。

 真実であられる神様への賛美は私たちの力となり、神様の勝利、神様の栄光につながっています。イエス様の降誕の夜、ベツレヘムの野原で、み使いが表れ、天の軍勢が賛美しました(ルカ2章参照)。パウロとシラスはピリピでムチ打たれ、牢に捕えられていました(使徒の働き16章参照)。心から賛美し、祈りを献げました。神様は大地震を起こされて、彼らを救い出され、看守一家がイエス様を信じました。天上の礼拝の賛美は黙示録に詳しく記されています。悪しき者は全く滅ぼされ、神様の永遠の支配が明らかにされていきます。悪との激しい戦いに、天上では賛美がささげられて、力となっていくのです。私たちも賛美をささげながら、日々力をいただき、それぞれの戦いに勝利しようではありませんか。