聖書各巻緒論37・預言書15
説 教 題:「神の民を励まし強める」  井上義実師
聖書箇所:ハガイ書1:1~11

 ハガイ書が開かれてきました。聖書各巻緒論も旧約聖書39巻の内37巻目になります。ハガイ書はわずか2章の預言書です。しかし、内容的にも、イスラエルの歴史においても重要な意味合いがあります。

Ⅰ.ハガイ、ゼカリヤ(エズラ、ネヘミヤ)の時代


 預言書を記した預言者の活動時期は主に、イスラエルが分裂した南北王国時代に当たります。イスラエルの民が不信仰ゆえに、神様を離れ、王から始まって市井まで自分勝手に歩みました。偶像礼拝を近隣の諸国から持ち込み、神様を軽んじ顧みなかったことへの警告が語られました。預言者を通して語られた御心を受け入れて、悔い改めることをしなかった両国はついに滅びます。
北王国イスラエルは失われます。南王国ユダはバビロンに捕囚として連れて行かれます。遠く捕囚の地で、神様からの預言を語ったのはエゼキエル、ダニエルです。神様の言葉が語られ続けたことは、イスラエルの民が異邦の地で辱めを受けていても、神様が見捨てられていなかった証拠です。
旧約聖書の預言書の最後の3巻はハガイ、ゼカリヤ、マラキになります。この3巻はバビロン捕囚の後に、主にユダヤを舞台に語られた預言になります。また、ハガイ、ゼカリヤの時期に、指導者として活動したのがエズラ、ネヘミヤです。イスラエルの民は敵対する者たちに妨害されながらエルサレムの神殿、エルサレムの城壁、イスラエルの国土、何よりも信仰を回復していく時代でした。預言者であるハガイとゼカリヤは国の復興のために、神の民を励まし、導き、力付ける霊的な使命を負っていたのです。

Ⅱ.ハガイへの4つのメッセージ


 ハガイ書は2章の短い預言書ですが、神様からの4つのメッセージが残されています。

1)第一の宣言 1:1~15


 ペルシャ王キュロスの布告によってイスラエルの民は第一陣が帰国します。帰国後、エルサレム神殿再建が始まりますが、妨害にあって基礎のみで中断します。その後、ダレイオス王の第二年まで16年が無駄に過ぎ去ってしまいました。預言者ハガイは総督ゼルバベルと大祭司ヨシュアへ、神様の命令として、神殿再建工事の再開を告げます「この宮が廃墟となっているのに、あなたがただけが板張りの家に住む時だろうか。」。世俗の生活に落ち着いてしまって神様を顧みていないという厳しい言葉で叱責されています。工事を成し遂げるための約束は神様が共におられ(1:13)、霊に力を与えられる(1:14)ことにありました。

2)第二の宣言 2:1~9


 栄光に満ちた神殿が建つと、神様はゼルバベル、ヨシュアをさらに励まされます。かつてのソロモンの神殿に勝るとさえ言われています「この宮のこれから後の栄光は、先のものにまさる。─万軍の主は言われる─この場所にわたしは平和を与える。─万軍の主のことば。」」(2:9)。栄光が満ちるのは救い主イエス様と結び付いているからである。やがてイエス様はこの宮に立たれ、この宮よりも大いなる者がいると言われた「あなたがたに言いますが、ここに宮よりも大いなるものがあります。」(マタイ12:6)。

3)第三の宣言 2:10~19


 ここでイスラエルの民の罪と汚れが示されます。イスラエルのこの時の状態は汚れていたのです。神様を礼拝するために身を清めなさいという使信です。今、後のことをよく考えなさいと神様は繰り返し語られています。今は神様から離れて空しい状態にあったしても、神様の前にひれ伏し、悔い改め、立ち返るならば祝福の約束が果たされていきます「種はまだ穀物倉にあるのか。ぶどうの木、いちじくの木、ざくろの木、オリーブの木は、まだ実を結ばないのか。今日から後、わたしは祝福する。」(2:19)。

4)第四の宣言 2:20~23


 イスラエルを率いる総督ゼルバベルへの励ましで締めくくられます。たとえ天地が揺り動かされても、どんな王国、どんな軍隊が押し寄せてきたとしても勝利する、神様の守りがあると言われています。「あなたを選んで印章とする。」(2:23)とあります。契約を結ばれる神様の保証が確かであることを示しています。

Ⅲ.ハガイを通してなされる業


 イスラエルの民が、捕囚を終えてバビロンからユダヤへの帰還を果たしても、敵対勢力による妨害がありました。エルサレム神殿の再建には16年間の空白が生まれてしまいました。エルサレム神殿の再建、エルサレムの城壁の再建、国土の復興へと向かうには多くの困難がありました。しかし、それを乗り越えていく信仰をハガイは神様によって語り続けました。ハガイの働きは偉大なものがあったのです。

 コロナ禍4年目の教会の働きがこれから進められていきます。教会の内側がしっかりと結び合わされていくことのために、教会の外側に福音の宣教がなされていくために、私たちは力をいただいて進みます。教団の課題も本日の信徒懇談会で語ります。
教会も教団も、再建、復興、新しい業を果たしていくために、まずは霊的な力をいただいて進んでいきましょう。

「主の使者ハガイは主の使命を受けて、民にこう言った。「わたしは、あなたがたとともにいる─主のことば。」
主が、シェアルティエルの子、ユダの総督ゼルバベルの霊と、エホツァダクの子、大祭司ヨシュアの霊と、民の残りの者すべての霊を奮い立たせたので、彼らは自分たちの神、万軍の主の宮に行き、仕事に取りかかった。」(1:13・14)