聖書各巻緒論55・パウロ書簡11(牧会書簡2)
説 教 題:「キリストの真実が支える」 井上義実師
聖書箇所:テモテ第二2:8~15
早いもので、今日は11月最後の聖日礼拝となりました。次週から待降節・アドベント礼拝を迎えます。季節も先週来、突然冬がやって来たかのように感じます。
聖書各巻のテーマも少しずつ進めていますが、前回9月29日のテモテへの手紙第一、今回のテモテへの手紙第二、次のテトスへの手紙は牧会の手紙と呼ばれています。パウロは牧会者であるテモテ・テトス宛てに教会の働き、牧会者としてのあり方を伝え、励ましています。
4:6・7以下の言葉「私はすでに注ぎのささげ物となっています。私が世を去る時が来ました。私は勇敢に戦い抜き、走るべき道のりを走り終え、信仰を守り通しました。…」から、パウロの最後の手紙と言われます。今日の聖書箇所から見ていきましょう。
Ⅰ.キリストを心に留める
パウロの愛弟子であるテモテに対する勧めの言葉が記されています。「イエス・キリストのことを心に留めていなさい。」(8節)は神様の働き人として当然のことです。何時も立ち返るべきこと、絶対に欠かせないことであります。そのイエス・キリストは「ダビデの子孫として生まれ」と記されています。今年もひと月後には、クリスマスを迎え、イエス様の御降誕を崇め、神様の愛を喜びます。この言葉は、イエス様は人としてこの世に生まれられたことを強調しています。イエス様はこの地上に来られて、人としての苦労、困難を味わい、神様の働きに当たられました。
現在、パウロも獄につながれて苦闘しています。テモテの苦労を覚えつつ、イエス様も、パウロ自身も苦闘しているという励ましを語っています。パウロが、自分は苦労せずに安泰でいるのではなく、同じ苦闘、いいえ牢獄にあってさらに大きな苦闘を続けているところに説得力があります。苦闘の中もイエス様を心にいただいて、力、勇気、愛を持つことができます。
Ⅱ.キリストをたたえる
11節から13節のカッコ内は初代教会当時の賛美歌であったと言われています。4節からなっており、「キリストと共に死ぬならば私たちは生きる」、「キリストと共に耐え忍ぶならば私たちは王となる」、「キリストを否むなら私たちはキリストから否まれる」、「たとえ私たちが不真実でもキリストは常に真実である」と歌われています。この賛美歌の前後にも真実、真理という言葉が出てくるように、キリストの真実がこの賛美の主題です。
Cf.今この時は、何が真実なのかが見えづらい時代ではないでしょうか。様々な面で社会は進歩しましたが、80年以上前と変わらない世界のように見えます。
既存の権力を否定し大衆の味方であるように語るポピュリズム、刺激的なウソを発信して人を扇動するようなデマゴーグ、独裁的な権力を持とうとするファシズム、厳しい状況の中で他者を排除する利己主義、排他主義がはびころうとしています。私たちは、そのような風潮であったとしても、流されることなく真理を見出すことが大切なのです。…
私たちは真実をこの世界に見出し、自分自身も真実に生きたいと願っています。そのように思いつつも、不真実さを持つかも知れません。しかし、私たちが信じるイエス様は真実以外の何者でもありません。決して変わらないイエス様の真実の中に、私たちは守られています。私たちは保たれています。私たちは生かされています。イエス様がたとえ私たちが不真実に陥ろうとしても「私たちのために、とりなしていてくださる」(ローマ8:34)からなのです。私たちを守られるイエス様によりすがり、イエス様をたたえましょう。
Ⅲ.キリストを表す働き人
パウロは言います。イエス様もパウロ自身も、神様のために苦闘していることをです。イエス様は不真実な私たちのためにも真実を尽くしてとりなしてくださいます。
テモテに「あなたは務めにふさわしいと認められる人として、すなわち、真理のみことばをまっすぐに説き明かす、恥じることのない働き人として、自分を神に献げるように最善を尽くしなさい。」(15節)とパウロは語ります。戦いは多くありますが、神様の前に全力を尽くして従おうとテモテに勧めています。
「みことばをまっすぐに説き明かす」という説教に対する姿勢、「自分を神に献げる」という奉仕に対する姿勢をパウロは示します。人間にできることには限りがあります。しかし、私も説教について、奉仕についてできる最善をささげて、主に委ね、心安んじていたいと願います。私たちの手の業は小さくても、そこに主が働かれるという信仰に立っていこうではないでしょうか。
この聖書箇所も、パウロ、テモテという遠い時代の立派な神の人に関することがらと受け止められやすいのではないでしょうか。いいえ、私たちもそれぞれに神様に認められ、働き人として期待されています。私たち一人一人も、私たちができる最善を主に献げていくものとなろうではありませんか。
